ある男子高生とファッション

私が高校生の時の事です。

私は地元の女子高に通っていました。その女子高からそれ程近くないところに男子校がありました。この男子校は一応学ランが制服として指定されていましたが、私服通学もOKだったため、殆どの生徒は私服通学でした。

中学まで同級生だった男子が何人かその男子校に通っていました。その中に、はっちゃけた性格のTがいました。Tは目立ちたがり屋で、全てにおいて通常とはちょっと違う美学を持っており、普通の人の思考の斜め上を行く発言を頻繁にするので、昔からクラスの注目の的でした。高校に行ってもその性格は変わらず、常に自分の道をばく進していました。

時は冬。雪のちらつく東北の12月。ある朝のクソ寒い通勤通学時間、会社や学校に向かう人の波に混じって、なんとランニングシャツ一枚で登校中のTを見かけました。彼と彼の取り巻きの会話から察するに、どうもそのランニングシャツはブランド物らしいです。しかしブランドだろうと何だろうと、木枯らし吹き荒ぶ灰色の空の下、そのいでたちは異様過ぎます。Tの取り巻きも同級生も友達のお母さんやお父さんまでが「寒くないの?」と声をかける中、Tの返答は一貫して「おしゃれに寒さなんて関係ないぜ!」でした。どうやら彼の哲学では、防寒を犠牲にしてもおしゃれは成り立たなければいけないようです。

その後Tが凍えずに一日授業を受ける事ができたか、風邪を引かずに済んだか、私はよく知りません。ただ、自分の信じるファッションを全うするために毎日季節感のない服装でTが通学するのではないかと思っていたのですが、さすがの彼も何かを悟ったと見えて、寒空に薄着はその後一度も見かけませんでした。

高校を卒業したTは仙台で就職し、そこで未だにわが道爆走中だ、と同じく仙台に就職した地元の友達から時々連絡が来ます。ずっと一緒にいると間違いなく疲れるし、常識の範囲で会話をしようとすると絶対に無理な相手ですが、ファッションも生き方も何もかも含め、彼には彼なりの哲学があるのでしょう。